13.”you”だけが、なぜ単数形と複数形が同じなのか?

13.”you”だけが、なぜ単数形と複数形が同じなのか?

こんにちは。

 

今回は、

「英語の you は、どうして単数も複数も同じ you なのか?」

という疑問について記します。

 

 

 

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相手(you)を呼ぶ時の日本語と英語の違い

 

日本語には、you を表す言葉がたくさんありますね。

「あなた」「あなたたち」「お前」「お前たち」「きみ」「きみたち」「あなた様」「あなた方」、、、、。

 

しかし、英語では相手が一人でも何人いても you の一語です。

また、相手が自分より目上でも目下でも you の一語です。

相手と自分との関係を考えなくても良いから便利なように感じます。

 

以下は、日本語と英語の違いを表にしたものです。

 

日本語

単数 複数
親称 きみ きみたち
おまえ おまえたち
あんた あんたら
敬称 あなた あなた方
あなたさま あなたさまがた
貴殿
皆さま

 

英語

単数 複数
親称 you you
敬称 you you

 

表で一目瞭然ですが、

日本語は「相手」に対応する「たくさんの呼称」があります。

 

一方、

英語は、本来、単数か複数かにこだわる言葉ですね。

次の例をご覧願います。

1.A girl goes to the park.

2.Girls go to the park.

単数か複数かは、主語部分と動詞部分の2か所において表現されています。

 

一方の日本語は、

1.少女は公園へ行く。

2.少女たちは公園へ行く。

単数か複数かは、主語部分でしか表現していません。

 

こんなにも単数か複数にこだわった表現をする英語なのに、

どうして you だけが人数にこだわらず、単数形と複数形が同じなのでしょうか?

 

 

 

昔は、you に単数複数の区別および親称敬称の区別があった!

 

今回も前回同様、ネット連載『現代英語を英語史の視点から考える』(堀田隆一慶応大学教授)を参考にし、表も引用します。

→前回ブログ、「12.英語の語順は、なぜSVOなのか?」

 

 

次の表と説明をご覧願います。

 

1.古英語の時代(700-1100年頃)の動詞変化

2人称においても、他の人称と同じく、単数と複数の違いが分かるように動詞の語尾を変化させました。

(単数:lufast→複数:luflap)

 

 

2.古英語の時代の you

古代英語のyouは、単数と複数に加え、両数(二人)がありました。

 

 

3.古英語~初期中英語(1100-1300年頃)の you

初期中英期には両数が衰退し、現代英語のような単数と複数の2系列に再編成されました。
しかし、「数」というシングルスタンダードによって þū か ġē かが選択されるという基本方針は変わっていませんでした。
(実際には、この時代には各々 thou, ye などと綴られるようになっていました)

 

 

4.後期中英語(1300-1500年頃)~初期近代英語(1500-1700年・シェークスピア文学)の you

後期中英語(1300-1500年頃)に近づいてくると、フランス語などのヨーロッパの近隣言語における言語習慣の影響を受けて、英語の thou と ye の使い分けに追加の基準が持ち込まれるようになりました。
つまり、従来の「数」による基準と並行して、「親」か「敬」という新たな観点が加わりました。

 

 

5.後期近代英語(1700-1900年頃)~現代英語(1900年頃-現在)の you

 

 

17世紀中には親称の thou は衰退し始め、標準英語では18世紀に廃用となります。
こうして,後期中英語に発達した「数」と「親・敬」のダブルスタンダードは、後期近代英語(1700-1900年頃)に入る頃までに消滅しました。
そして、「親・敬」という比較的新しく加わった基準が機能しなくなるとともに,より古い基準である「数」の基準も連動して消えていったことが興味深いです。
いまや、相手が単数であれ複数であれ、社会的に上位であれ下位であれ、とにかく1つの不変の you を使っておけばよいという選択不要の状況が生じました。
ダブルスタンダードの時代から、一気にノースタンダードの時代へと飛躍しました。
これが現代英語(1900年頃-現在)にまで引き継がれています。

 

 

6.現代英語および今後の英語 の you

 

「しかし」です。

実は2人称代名詞体系は、再び古英語のように「数」の基準だけに依拠するシングルスタンダードへと回帰しつつあるようなのです。
状況は方言によって異なりますし、多くの場合インフォーマルな文脈に限定されていますが、2人称複数を明示するのに you とは異なる語形が用いられるようになってきています。

 

(複数を表すとき、youとは異なる語形の例)

yous(e): 北米の多くの地域(とりわけニューヨークやボストン),アイルランド,イギリス(リヴァプールやグラスゴー),オーストラリア,ニュージーランド

you-uns: アメリカ高南部(西ペンシルヴェニアやアパラチア地方)

you-all, y’all: アメリカ南部

you guys, youse guys: 話し言葉で  この表現は、ハリウッド映画でしばしば聞きますね。

you folks, you people: 比較的フォーマルな文体で

 

 


6.まとめ

 

なお、この変遷の理由にご関心がある方は、

ネット連載『現代英語を英語史の視点から考える』(堀田隆一慶応大学教授)をお読みください。
「第10回 なぜ you は「あなた」でもあり「あなたがた」でもあるのか?」

 

 

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